当社は環境・社会に配慮した取組の充実をマテリアリティに掲げ、非財務目標の一つに「環境配慮型店舗の設置によるCO₂ の削減」を設定し、オートバックス等の店舗では照明のLED化や省エネエアコンを推進しています。
当社では、Scope1※1および2※2の算定をし、そのCO₂排出量の削減を目標としていますが、店舗出店に関わる部門でオートバックスでも、木造店舗が出店できないかと検討を模索してきました。そして、2024年 4 月、オートバックスグループ初となる環境配慮型の木造店舗をオープンしました。また同年6月には、さらなる推進に向け農林水産省と「店舗新築時における建築物木材利用促進協定」を締結しました。
今回は、木造建築による環境配慮型店舗の取り組みについてご紹介いたします。
※1:自社で直接排出する温室効果ガス
※2:自社で他社から供給された電気、熱、蒸気などを使用したことで間接的に排出する温室効果ガス
木造店舗の導入に至るまで
木造店舗開発に携わったオートバックス・プロパティデベロップメンツ株式会社の吉田和弘に詳細を伺いました。

オートバックスの店舗は、「物販店舗」と「自動車整備工場(PIT)」のふたつの要素が混在しています。特にPITは引火性などを厳しく管理しなければならないので木造建築を導入するには十分検討する必要がありました。
またタイヤ売場やPITが占める店舗の正面は、ほとんどが開口部。当初は木造=在来軸組工法というイメージからこうした造りの設計は強度の面で導入が難しいという先入観がありました。しかしながら偶然にも熊本空港の天井に使用されているトラス(高耐久、高強度な木質トラス)を見て、木造店舗の可能性を感じました。さらに、柱と梁を用いない壁式構造とし、梁にトラス架構を採用することで大空間の店舗設計が可能であること、耐火性については木造建築では基準が厳しくなりますが、建築確認検査機関の指導によりクリアすることができました。木は成長過程でCO₂を吸収・固定し、建築材料として使用することで長期間炭素を蓄えます。そして木材の生産・加工に必要なエネルギーは鉄やコンクリートより少なく、CO₂排出量を抑えられます。さらにリサイクルが容易で廃棄物の削減にも貢献します。適切な森林管理を行えば、木材は再生可能資源として持続的に利用可能であり、環境負荷の低減につながることなど、木はSDGs、CO₂ 削減に適した素材であることなどを木造メーカーなどから情報提供いただけたことで、グループ初の木造建築の店舗への実現に踏み出しました。そしてこの頃から林野庁(農林水産省)に木造建築の取組について相談するなどコミュニケーションを取らせていただいた結果、協定を結ぶ運びになりました。
店舗新築時における建築物木材利用促進協定を締結
こうして1店舗目の木造店舗出店をきっかけに「店舗新築時における建築物木材利用促進協定」を締結するに至りました。これは、農林水産省の掲げる「木材利用(ウッド・チェンジ)促進による、脱炭素社会・持続可能な社会の実現」の趣旨に賛同し、お互いに連携・協力することを目的としています。
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- 締結式の様子
左:堀井勇吾 株式会社オートバックスセブン 代表取締役 社長
右:青山豊久 林野庁長官(当時)
調印お披露目式のあとに行われた懇談会の席で、林野庁長官から「これまで130件を超える協定が結ばれていますが、自動車関係の業界は初めて。こうした木材を使う取り組みがさまざまな業界に広がることを期待します」と述べられました。


協定の概要と目的
締結の日から2027年3月31日までの期間、当社の「建築物木材利用促進構想」について、農林水産省と連携・協力することで当社による取り組みを促進し、構想の達成に寄与することを目的としています。
協定の内容
今後整備する自社の店舗(物販+自動車修理工場の複合用途の店舗)の建築にあたり、構造や内外装に木材を用い、一建物あたりに一定量の地域材を積極的に活用することにより、2050年カーボンニュートラルの実現や山村の活性化等に貢献していきます。また、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(平成28年法律第48号、以下「クリーンウッド法」)第2条第2項に規定する合法伐採木材の利用を推進することにより、環境配慮の取り組みを推進していきます。
グループ内の木造建築店舗
上記「オートバックス佐賀大和インター店」に続き、2024年10月に「オートバックス四国中央店(愛媛県四国中央市)」をオープンし、2025年3月現在の木造建築店舗は計2店舗となりました。
オートバックス佐賀大和インター店

オートバックス四国中央店
どちらの店舗も木造躯体はツーバイフォー材を主に使用した枠組壁工法とし、室内に柱型が生じない大空間が実現。売場の有効寸法を広げました。売場の天井部分は木造トラスを露出させ、木材による温かみを感じられる造りにしています。飲食店などに多い木造建築店舗ですが、オートバックスの店舗が木造であることは今までなかったので、あえて木を見せられるところは見せる造りにこだわりました。

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- 四国中央店では一部の什器においても地元木材を使用しています。
ご来店のお客様からは「カー用品店で木の香りするのは珍しくていい」「木のぬくもりを感じる」などの感想が聞かれました。
「ZEB Ready」認証を取得
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- 認証ステッカー
(左:佐賀大和インター店、右:四国中央店)
両店舗とも建築物省エネ法第7条に基づき建築物の省エネ性能を表示する第三者認証制度の1つで、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会が運営している建築物省エネルギー性能表示制度「BELS※3」において最高ランクの5つ星を獲得すると同時に、「ZEB Ready※4」を取得しました。
今回環境認証を取得した店舗では同じ木造建築の条件下の物件と比較して、冷暖房と照明などの一次エネルギー消費量を佐賀大和インター店においては56%程度、四国中央店においては57%程度削減できる見通しです。
※3:「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略で、建築物の省エネルギー性能を表示する第三者認証制度です。
※4:「ZEB(ゼブ)」とは、「Net Zero Energy Building」の略。外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量削減に適合した建築物となります。
今後について
2027年(令和9年)3月31日までに新築する店舗の10%に木構造を採用し、一建物あたり25㎥以上の地域材を利用する設計を基本とし、3年間で計150㎥の地域材を利用することを目指します。その際、クリーンウッド法に基づく登録木材関連事業者により合法性が確認された木材を利用いたします。
これからも当社は環境配慮の取り組みを推進していくことで、社会課題の解決に向けた取り組みに挑戦してまいります。