現在、「外国人技能実習制度」を用いて、日本国内で活躍している外国人技能実習生が増えています。「外国人技能実習制度」とは、東南アジアを中心とした開発途上地域の経済発展を担う若者が、日本で働き、高い技術を身につけることにより、帰国後、母国の発展に寄与することを目的とした、国際協力を推進する制度です。オートバックスグループでも、2006年からこの取り組みを行っており、これまで160名弱の外国人技能実習生を輩出し、日本の高度な自動車整備技術の継承を行っています。

外国人技能実習生の受け入れを始めた経緯、ASIC立ち上げについて

 今から約15年前、オートバックスグループでは、近い将来、少子化による若年労働者減少の問題に対して、いずれは外国人と一緒に就労することが一般的になることを想定して、監理団体(事業協同組合)を通じた3年間の実習という形での外国人実習生の受け入れが行える『外国人技能実習制度』の枠組みを活用し、2006年7月にオートバックスグループのFC(フランチャイズチェン)加盟法人の有志(10社)で、ASIC(協同組合オートサービス・インターナショナル)を設立しました。

 当時の外国人技能実習制度においては、自動車整備の職種は認められていなかったため、同制度の職種として認められていた「金属塗装(板金塗装)」での実習を行いました。

 そして2007年6月、ASICを通じ外国人技能実習生の第1期生5人が、フィリピンから来日しました。

技能実習生受け入れ当初の苦労

 ASICの担当者は、当時の状況について次のように話しています。

 「発足当時は、すべてが初めてのことなので、まずは自分たちで模索しながら対応していました。はじめは、1ヵ月の集合研修を合宿で実施しました。そこでは、日本語の教育から日本での生活・文化の違いまで教えました。今でこそ外部の研修機関に協力を得られる体制がありますが、ノウハウが確立されるまで研修カリキュラムの作成は手探りでした。
 また苦労したのは、コミュニケ―ションの面です。受け入れ側の店舗では、これまで外国の文化や習慣に慣れていなかったことに加え、日本語でのコミュニケーションが上手ではない技能実習生も多かったため、技術を伝える以前にコミュニケーションをとるところから始まりました。そのため、特に力を入れていたことは、日本語能力試験(JLPT)に準じた教育でした。
 文化の違いでは、陽気な気質が多いフィリピン人と、相対的に控えめな日本人との差がありました。例えば、作業中に歌いながら作業をする技能実習生をお客様が目にすると『まじめにやっているのか? 』などとお叱りを受けることもありました。」

技能実習生を受け入れることでお店の雰囲気がガラリと変わったケースも

 発足当初は、かなり苦労が絶えなかったようですが、一方で活性化という点で貢献したこともあったようです。


 「外国人技能実習生を受け入れるにあたり、店舗スタッフに対してもいい刺激となり、今まで以上に「相手を理解する」「相手に伝える」ということに注力するようになりました。その結果、技能実習生とのコミュニケーションに限らず、スタッフ間やお客様とのコミュニケーション能力が向上しました。
 また、一部の店舗では、外国人技能実習生が店舗で働いていることをお客様にもご理解いただくため、店頭にはスタッフの情報を写真とともに紹介するなど、お客様とも積極的にコミュニケ―ションを図る活動をしています。

「自動車整備」職種が認められASICの規模が一気に拡大

 2016年4月に「自動車整備」が技能実習の職種として追加されました。それまでは、「金属塗装」職種としての受け入れであったため、「店舗に塗装ブースや実際に塗装の実務経験者がいる」という条件により対象店舗が限られていました。
 しかし、2016年4月からは「自動車整備」職種としての受け入れに変更し、条件は自動車整備工場の形態となり、受け入れ可能な対象店舗が一気に増加しました。対象店舗の増加にともない、技能実習生の受け入れ人数も増加し、「金属塗装」での受け入れは10人程度でしたが、「自動車整備」として受け入れた技能実習生は19人と2倍近く増加しました。
 現在は、年に3回、受け入れる技能実習生の選考会を行い、1回あたり20~25人を受け入れています。技能実習期間は3年のため、常に200人以上の技能実習生が、オートバックスグループ店舗で研修を受け技術を磨いています。また、この取り組みに参加しているFC法人数もASICの立ち上げの際には10社ほどでしたが、現在は22社となりました。
 その後、技能実習制度の見直しに伴う関連法令の制定があり、2017年11月に、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)が施行されました。優良な実習実施者や監理団体等に限定した第3号技能実習生の受け入れ(4~5年目の技能実習期間の延長など)ができるようになりました。これを機に、監理団体としての認可が必要となり、厳しい審査を経て2018年7月にASICは認可を受けました。

母国へ帰国後、技能実習で培った技術を発揮

 技能実習期間を終えた技能実習生たちは、その後、フィリピン国内で自動車整備のメカニックとして従事するほか、当社のパートナー企業であるMotechグループ店舗で勤務したり、一念発起して自ら自動車整備工場を立ち上げるなど、オートバックスグループで学んだ技能実習生が、現地の自動車産業で活躍する人材となっています。

日本第1号となる、「自動車整備」職種での特定技能1号資格取得者誕生

 2019年4月より新たな在留資格として特定技能制度が開始され、5月ごろからはさまざまな業種で特定技能1号※の資格者が誕生しました。同年9月には、日本で初の「自動車整備」職種における特定技能1号資格者が、オートバックスグループから誕生。その後も、技能実習の修了生から9名の資格取得者が生まれ、2020年現在では10名の特定技能1号資格者が、オートバックスの店舗で働き続け、さらに高度な技術を磨いています。
 

※特定技能1号とは、『特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を有する業務に従事する外国人向けの在留資格』で、有資格者は、特段の育成・訓練を受けなくても一定程度の業務を遂行できる技量が認められた人財です。

提携しているフィリピンのパーペチュアル・ヘルプ大学との取り組み

 また、新たな取り組みとして、フィリピンの提携先であるパーペチュアル・ヘルプ大学の工学部の生徒に向けて整備士育成の新しいコースをつくりました。現在は、プレ入学として希望者を募り1期生として教育を進めています。
現地では、整備士の基礎技術だけでなく、日本語能力も教育し、大学で約1年間学んだ学生は、日本のオートバックスグループ店舗で実務経験を積み、「N2※」レベルの日本語能力と2級自動車整備士の資格を取得するとともに自動車整備の高度化に対応できる技術を身に付けることを最終的な目標としています。


※N2とは、日本語能力試験(JLPT)の認定レベルで、難易度は上から2番目です。日常的な場面に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルとされています。

今後の目標は、高い整備技術を持つ人材を増やすこと

 現在、国内においては整備士不足が自動車業界全体の課題となっています。そのような情勢のもと、今後は、外国人技能実習制度や特定技能制度などを活用しながら、フィリピンのみならずASEAN地域(ミャンマー、インドネシア、マレーシアなど)から優秀な人材を集め、当社連結子会社チェングロウスのASICプログラムにより日本の高度な整備技術を持つ人材を増やすことが目標です。そして、オートバックスグループが保有している高い整備士育成技術のノウハウを伝え、業界の発展に貢献するとともに、国際貢献にも寄与したいと考えています。