Beyond AUTOBACS Vision 2032

 2023年5月、長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」を発表しました。その中で当社は、パーパス(存在意義)として「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」を、また、オートバックスセブンの進化の方向性として「出かける楽しさを提案し続ける会社」になるというありたい姿を併せて発表しました。

 急速なデジタル化や脱炭素社会の進展などにより、社会、クルマ、人のくらしと共にお客様のニーズも大きく変化しました。私たちは不確実で先が読みにくい経営環境の中でもサステナブルな成長を実現するために、改めて私たちの存在意義を問い直すことにしたのです。

 私たちオートバックスセブンには、創業当時から、大切にしてきたDNAがあります。創業者が提唱した「願望実現」という社是には、いかに心に描いたものをいきいきとさせることができるか、熱望し、深く信じ、熱意を持っていかに行動することができるかで、願いを実現できるかどうかが決まるのだという意思が込められています。初代のオートバックス宣言には、「私たちは気くばり一番によりお客様の交通安全と個性豊かなカーライフを心から願い、地域社会にマッチした販売とサービスを創造し提供します」という記載がありました。この「お客様の交通安全」と、「個性豊かなカーライフ」の2つの願いを「オートバックス」を通じて実現することこそが当社の原点であることから、私たちは「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」を当社のパーパスとしました。

 そして私たちは、「お客様に出かける楽しさを提案し続ける会社」として、クルマやモビリティをビジネスの中心とする限り、社会環境の変化に応じてビジネスやビジネスモデルを進化させ続け、社会の交通の安全に寄与することはもちろん、お客様の豊かな人生の実現という願望を実現していきたいと考えています。

 また、100年に一度と言われる大きな変革期を迎えている自動車産業の渦中においても、さらに経営のスピードを上げ、各事業の進化を図りつつ、事業創造にも挑戦し、新たな機会を捉えるための変革に取り組んでまいります。

 この度発表した2032年度までの当社グループの進化の方向性を描くビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」は、私たち自身が私たちを超えるという意味が込められております。

2022年度の振り返り

 2022年度の国内の自動車関連業界の動向は、世界的な半導体不足の影響を受け減少していた新車生産台数は回復基調へ転じましたが、ウクライナ情勢や中国政府によるゼロコロナ政策は、部品の供給不足と物流の停滞を招き、その影響が長期化しました。また、中古車においても、新車減産により下取り車の流通量が減少し、中古車登録台数は前年を下回る低水準で推移しました。カー用品関連においては、物価上昇の影響を受けたものの、寒波や降雪により冬季用品の需要が高まりました。

 この結果、新車減産や原材料・エネルギー価格高騰の影響を受けましたが、増収増益となり、当社グループの連結売上高は、前年同期比3.3%増加の2,362億35百万円、営業利益は前年同期比1.5%増加の117億22百万円となりました。

 国内オートバックス事業は、原材料価格の高騰などを受け一部商品を値上げしましたが、新車減産で高まった既存車のメンテナンス需要などを上手く獲得し堅調に推移しました。海外事業は小売、卸売ともに好調で営業損失を縮小することができました。また、ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業においても黒字転換が寄与し増収増益となり、最終的な当社グループの経営は、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益、全てにおいて期初計画を上回ることができました。

重点的な取り組み

 2022年度は、実効性向上とスピードアップ、持続的成長に向けた取り組みの強化、人づくりのための取り組みの継続の3つを重点的に取り組むこととして掲げ、実行してきました。

 実効性向上とスピードアップについては、事業ポートフォリオの見直しと絞込みによる経営資源の最適化を推し進めました。具体的には、経営資源の最適化として、ライフスタイル事業の一部撤退を決定しました。次に事業ポートフォリオの見直しですが、取締役会で赤字事業の撤退審議を継続する一方で、成長の見込みのある分野を事業化し、戦略事業への取り組みを強化しております。具体的には、国内オートバックス事業の車買取・販売(C@RS)を独立させオートバックスグループ以外の新規加盟を募集していくという目的で収益の拡大を図ってまいります。また、ディーラー事業においてBYD Auto Japan㈱とディーラー契約を締結しました。EVの普及推進を通じ、脱炭素社会の実現にも貢献していきたいと考えております。

 そして、これらの取り組みを進める上で、迅速で的確な意思決定を実現するために、担当執行役員制度を廃止しました。各事業同士の有機的な連携の実現と事業ポートフォリオ運営の強化で変革のスピードをより一層高めてまいります。

 持続的成長に向けた取り組みの強化については、ネットとリアルを融合した「小売業としての進化」とDXの取り組みの一つであるユニークデータを利活用した「小売業からの進化」に注力しました。「小売業としての進化」ではオンラインとオフラインの融合を加速し、ECで購入した商品が店舗にあれば、店舗ですぐに受け取れる店舗在庫引当(BOPIS)や、同じく店舗に在庫があれば、店舗からすぐに配送するラストワンマイル対策を実施いたしました。これらの取り組みは物流の効率化はもとより、環境への配慮にも寄与すると考えています。

 「小売業からの進化」は、「デジタルエコシステムによる“CDE”の実現」をビジョンとして掲げ、その第一歩のDX戦略として、システム開発や、企画・運用・保守などを事業とする株式会社オートバックスデジタルイニシアチブを子会社化しました。今後は、IT基盤構築に関わる領域を強化し、デジタル人材の育成にも力をいれていきたいと考えています。ユニークデータの利活用についてはカーライフ総合情報サイト「MOBILA(モビラ)」をオープンし、オートバックスを利用する人にもしない人にも「クルマで出かける楽しさ」のきっかけを提供できるようなモビリティ情報のプラットフォーマーを目指していきたいと考えています。また、物流の効率化による値入改善に向けた取り組みも継続中で、効率化によるコストダウンを図り、値入改善から、店舗収益が拡大し、新規出店するための投資を生み出し、それにより売上利益が拡大する、そして価格交渉力が向上するという、好循環サイクルの実現を目指しています。

 最後に、人づくりのための取り組みの継続においては、特に整備士の確保が喫緊の課題となっており、採用・育成・定着化にフォーカスした取り組みを進めております。例えば、自動車検査員の教習試験対策研修会を全国で実施するなど、整備士育成を柱とし、グループ内での育成に力をいれています。また、小売業からの進化を実現していくためにDX戦略ともクロスした取り組みとして、オートバックスセブン全スタッフのデジタルリテラシー向上を目的としたDXリスキリングプログラムを開始いたしました。

 こうした人づくりのための取り組みにおいて、専門スキルを身につけお客様に新たな価値を提供できる体制を構築していきたいと考えています。

5ヵ年ローリングプランの振り返りと今後について

 「5ヵ年ローリングプラン2019」を発表して間もなく5年目を迎えます。クルマを取り巻く環境は激しく変化する中、当社は外部環境の変化やお客様のニーズの多様化を捉え、それに応じた施策をスピーディーに検討し実行できるよう、時流に合わせ継続的に5年後の方向性や戦略の見直しを行いながら、毎年その内容を更新しています。

 この4年間での取り組みと成果としては、さまざまな社会環境の変化に対して柔軟に事業および事業基盤の整備を進めた結果、利益水準を一定程度押し上げることに成功しました。今後は、各事業をROIC(投下資本利益率)で管理・見える化し、事業ポートフォリオの見直しや再構築を行い、さらにこの指標を事業統括の評価基準に組み入れ変革のスピードをあげていきたいと考えています。

 また、5ヵ年ローリングプランで掲げた「お客様がクルマを利用するシーンに合わせたさまざまなサービスを、ネットワークを通じて提供する」という成長の姿を目指し、これまで培ってきた事業基盤とネットワークを駆使しながら、既存のアセットを活かし、生産性を高めることで事業計画を確実に達成させてまいります。今後は、現在検討中の中期経営計画を確定させ、当社グループ一丸となって達成させるという強い意思と覚悟をもって取り組んでまいります。

中長期的な成長戦略

 冒頭でお伝えしましたが、長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」を発表し、「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」を私たちのパーパスとして掲げ、この先の10年は、オートバックスを超えるべく施策を打ってまいります。2022年10月より、次世代の経営を担う40代以下のメンバーにより、次期中期経営計画の検討をしています。「当社連結グループにとって中期経営計画は必要か」そのようなことから議論をスタートし、5ヵ年ローリングプランに代わる計画として、計画の具現化を行っており、2024年度には発表したいと考えております。

 また、当社グループがサステナブルな存在になるために、私たちは「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」を追求し、そのパーパスを経営と一体にしていくことが重要だと考えています。

 まずは、この重要さをグループ全体に浸透させるべく、当社グループの国内スタッフと、FC法人・店舗で働く約15,000名のスタッフを対象に、「サステナビリティ経営とSDGs」に関するe-ラーニングの受講を実施しました。将来に渡り経済活動を継続し、健全な社会の維持の中で私たちが必要とされ続けることは簡単ではなく、サステナビリティ経営を取り込むことはもちろんのこと、一人ひとりのスタッフが10年後、20年後の未来を見据え、検討していく必要があります。私たちは、社会課題を解決する事業の創出、環境・社会に配慮した取組の充実、成長し続ける組織・人財、持続可能かつ強固な経営基盤の4つのマテリアリティから、非財務目標とKPIを掲げ2030年度を目標に取り組みを開始しています。

ステークホルダーの皆様へ

 自動車産業を取り巻く環境は、“CASE”に代表される技術革新や気候変動という地球規模の課題の解決に向けて、大きな変革期を迎えております。これにより、社会・クルマ・人のくらしは、今後さらに大きく急速に変化してまいります。コロナ禍における影響や戦争の勃発は、オートバックスセブンの創業期から振り返ってみても初めて経験するような出来事でした。このように不確実性が増す中にあっても、将来を見据え外部環境の変化に対して柔軟かつスピード感をもって対応してまいります。

 当社は2024年度に、オートバックス1号店のオープンから50年の節目を迎えます。これからの経営環境の変化と未来のクルマ社会、そしてクルマを利用されるお客様に想いを馳せながら、基盤事業のさらなる強化と進化を図るとともに、創業期の当社がそうであったように、再び進取の気性に富む企業集団へと変貌を遂げて、新たな価値創造にも挑戦を続けてまいります。カーアフター市場は、成熟期を迎えているといわれますが、私たちは、カー用品の卸売・小売事業にとどまらず、「お客様にクルマで出掛ける楽しさを提案し続ける会社」へと進化を遂げ、持続的な成長を果たしていきたいと考えています。そしてこれからも、パーパスである「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」という私たちの願望を実現するため、既存の枠組みにとらわれずに新たな価値を創造することで、長期的かつ持続的に企業価値を高めてまいります。

 株主・投資家をはじめステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。