TCFD提言に基づく開示

 当社では、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと位置付け、 2022年6月に、TCFD提言に賛同を表明しました。また、気候変動がもたらすリスク・機会の財務的影響について情報開示を求めるTCFD提言に基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の開示推奨項目に準拠した情報開示を積極的に進めています。2023年度からはTCFDにおいては、国内すべての子会社におけるScope1、2の情報を収集し、2024年度以降、Scope3の開示に向けた準備を進めています。またCDPへの回答も開始し、今後も気候変動関連情報の拡充と開示を通じて、ステークホルダーとの円滑な対話を進め、さらなる企業価値向上を目指します。

ガバナンス

 当社は、サステナビリティ全般に関する課題を重要なテーマと捉え、社長をプロジェクトリーダーとして「ESG・SDGs推進プロジェクト」を発足し(2021年1月)、全社プロジェクトとして推進しています。その議論・決定内容は取締役会に報告され、取締役会においては、当社としての取り組みについて承認および必要な指示・監督を行っています。また、非財務目標のKPIの進捗は、事業統括および取締役全員が出席する事業統括者会議において年4回取り上げ、各事業統括が取り組み内容を発表し、進捗の共有をしています。また、KPIを変更する場合は、会議内での審議・決定により実行されております。

 2023年4月には、「サステナビリティ基本方針」および関連する方針の整備を行い、コンプライアンス遵守の徹底や健全で強固なガバナンス体制の維持・強化に努めています。また、当社グループの各種方針にもESGの視点を組み込むことで、持続可能な社会の実現に向けた事業活動を実践していきます。

 

 

戦略

 当社は、気候変動に伴うさまざまなリスク・機会を、事業戦略策定上の重要な観点の一つとして捉えています。当社では2050年までを対象期間とし、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した「1.5℃/2℃(未満)シナリオ」、および現在のペースで温室効果ガスが排出されることを想定した「4℃シナリオ」の2つの世界を想定しています。当社は、この2つのシナリオを踏まえて、TCFD提言に沿って、気候関連リスク・機会を抽出し、その上で、気候変動がもたらす移行リスクや物理的リスク、気候変動への適切な対応による機会を特定しました。

 

 「4℃シナリオ」においては、干ばつや大雨など異常気象が多発し、急性的な物理的リスクの影響により、物流センターやデータセンター、店舗の被災・休業、また冬季用品の需要減が発生する可能性があり、事業に甚大な影響を及ぼすことが想定されます。物流センターやデータセンターについては、既に地域の分散やバックアップ体制の整備が進んでおり、物理的なリスクを最小限に抑えています。また、店舗については、浸水リスクに対し、BCPの観点からの立地選定や構造の工夫等を進めることにより物理的なリスクを最小限に抑えることができると考えます。商品については気温帯の変化、消費行動の変化に見合う商品の投入を進めることにより、冬季商品需要減に伴う機会損失を最小限に抑えるための取り組みを進めています。

 

 「1.5℃/2℃(未満)シナリオ」においては、温暖化抑止に向けて技術革新や規制強化が進み、社会が変化することが想定されるため、移行リスクの影響がより顕在化すると考えます。炭素税などの税制、ZEB(Zero Energy Building)の標準仕様の義務化などの規制強化、電気料金の上昇など、 店舗や物流センターのコストが上昇するリスクがありますが、省エネの推進により、リスク低減を進めています。また炭素税や排出権取引の導入、ZEV(ゼロエミッション車)メーカーへの優遇政策や内燃自動車への規制強化等が進むことにより、エンジン搭載車の販売台数が急激に減少し、代わりにZEVの普及が急速に進むことが想定されますが、ZEVの拡販に伴う売上増に加え、ZEV推進のためのインフラ整備や拡充を積極的に進めることで、販売機会の拡大に努める予定です。

 なお、気候変動の影響は中長期的に顕在化する可能性を有することから、外部動向の変化も踏まえ、定期的にリスク・機会の分析・評価の見直しや対応策の具体化を進め、中長期の経営戦略に反映させていきます。

 

■分析対象

   [事業] 国内オートバックス事業、ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業、その他事業

   [範囲] 日本国内 事業所、直営および子会社店舗、物流拠点

   [期間] 現在~2050年まで(短期:1年以内/中期:~2030年/長期:~2050年)

 

■分析ステップ

 (1) 各気候関連リスク・機会要因が、分析対象範囲に及ぼし得る影響を網羅的に抽出

 (2) (1)を俯瞰し、より発生可能性の高いリスクを整理

 (3) 採用シナリオ(物理的リスク:RCP2.6・RCP8.5、移行リスク:NZE・STEPS)に基づき、「1.5℃/2℃(未満)」および「4℃シナリオ」下での事業インパクトの検証および財務的影響を算出

 (4) (3)の結果への対応策を検討

 

■参照文献

 気候変動監視レポート2020(気象庁)/日本の気候変動2020(文部科学省、気象庁)/ハザードマップポータルサイト(国土交通省)/Global Hybrid & Electric Vehicle Forecast(LMC Automotive)/IPCC・AR6・WG1報告書 /IEA(2021)World Energy Outlook 2021/車両電動化の見通し(東京主税局)等

    

※ 下線部分は前年度からの変更箇所

物理リスク: 気象災害の激甚化等の気候変動に起因するリスク

移行リスク: 温室効果ガス排出に関する規制等による低炭素経済への「移行」に起因するリスク

 

 

リスク管理

 当社は、全社のリスクを一元管理する組織として、代表取締役 社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、事業活動に潜むリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を行っています。

 リスクマネジメント委員会では、事業への影響度・頻度などを分析・評価し、リスクの高いものから対応策が議論され、発生前のけん制を行うことを目指しています。また、取締役会への重要リスクの報告、およびリスクの対策に関する各部門への具体的な支援を行っています。

 サステナビリティに関わるリスクや機会については、ESG・SDGs推進プロジェクトが主体となり、各事業よりリスク情報や機会を収集し、リスクの特定と評価および機会の識別や評価等を実施しています。また、気候変動は別途TCFDチームの組成により、リスクと機会を特定し、財務的影響の算出等を行っております。こうして特定されたリスクと対応の進捗を、リスクマネジメント委員会と共有することで、組織全体のリスク管理項目に統合していきます。

指標と目標

 当社は、「人とクルマと環境が調和する安全・安心でやさしい社会」を目指し、温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。削減目標として、日本政府の宣言に基づき、2050年度にカーボンニュートラル(排出量実質ゼロ)を掲げ、取り組みを推進いたします。

 具体的には、お客様の商品使用段階における排出量削減も含めた環境配慮型機能性商品の開発や、省エネ店舗化の推進および資源循環への取り組み等を検討し、それらの数値目標の開示についても進めていきます。

 

■2022年度
算定範囲:[事業]  国内オートバックス事業、ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業
             [対象] 日本国内 事業所、直営および子会社店舗、物流拠点(196拠点)
算定期間:2022年4月1日~2023年3月31日

 

■2023年度
算定範囲:[事業]  国内オートバックス事業、ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業、その他の事業
             [対象] 日本国内 事業所、直営および子会社店舗、物流拠点(204拠点)
算定期間:2023年4月1日~2024年3月31日

 

Scope 1:燃料の燃焼、工業プロセス等、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope 2:他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出