50周年 誕生から今までの振り返り
現在私たちが置かれている背景
願望実現――この言葉は、創業者である住野敏郎がオートバックスセブンの社是として残し、今もなお当社のDNAとして存在するものです。これは、自らの心に描いた夢や未来を熱望し、深く信じ行動すれば、それは必ず実現できるとの想いが込められた言葉です。
創業者が生み出した、カー用品や自動車部品が1カ所で購入できワンストップで取り付けられる店舗「オートバックス」は、1974年11月に誕生し、2024年に50周年を迎えました。当時はまだ珍しかったフランチャイズ展開にて大きく成長し、日本のモータリゼーションの発展を背景にわずか5年間で100店舗を達成しました。
1977年にプライベートブランド商品の開発・販売を開始し、1986年には海外に初進出いたしました。現在は、台湾、タイ、シンガポール、フランス、マレーシア、フィリピンでオートバックスを約100店舗まで展開するに至り、中国、オーストラリアではオイルやオーディオなどの卸売を行っております。
2002年からは全店で車検・整備の取り扱いを始め、同年にオートバックスカーズとして中古車の買取・販売を開始しました。
今では「カー用品」「車検・整備」「車買取・販売」の3つが店舗の事業の柱となっており、グループの総店舗数は国内外で約1,000店舗となりました。
一方で、第1号店オープン当初は、労働力人口の増加や自動車がステータスであったという時代背景、カークーラーやカーオーディオ、クルマのカスタマイズの流行、また、カーナビゲーションの取付需要などに支えられ、自動車アフターマーケットは盛り上がりの時期にありましたが、2000年以降その勢いは衰え、カー用品市場は徐々に縮小しております。
そのような中、中古車の買取・販売や車検・整備などを開始したことで、新たな売上を確保することはできたものの、カー用品市場の縮小から現状維持に留まっており、約20年間は大きな成長を遂げることができておりません。
環境変化も大きくなるなか、私たちは何度も中期経営計画を策定し、挑戦をしてきましたが、結果として計画を実現できないということが続きました。こうした状況を打開するため、2019年度に、「5ヵ年ローリングプラン」を打ち出しました。
5ヵ年ローリングプランの振り返り
事業環境の変化に柔軟に対応できるよう5年先の数値計画は公表せず、当期のみの数値計画を公表し、5年先のあるべき姿を毎期ローリングさせることを目的に、私たちは5ヵ年ローリングプランを策定しました。
しかし、ローリングプランを策定した2019年度以降は、事業環境は変化どころか先の読めない乱気流に突入したような状況となりました。コロナ禍を経て働き方が変わり、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした物価の上昇、急速に進む円安など著しい変化が続くなか、時流に合わせた見直しを図ってまいりました。
成果としては、主要事業であるオートバックス事業の周辺領域を広げ、自動車ディーラー事業、BtoB事業、オンラインアライアンス事業、ライフスタイル事業により拠点を拡大し、顧客情報プラットフォームの構築やアプリ開発に着手するなど利便性の拡充を行いました。また、海外事業においては小売から卸売へシフトし、売上の拡大を図りました。
そして、これらの実行スピードを上げるため、構造改革に着手し、執行役員制度の廃止、本部のスリム化を行い、人事制度の見直しや経営者人材の育成を進めるなど、さまざまな改革を進めることで再成長を遂げるための土台を構築し、以前に比べ、利益水準を一段上げることに成功いたしました。
なかでも、昨年度に実行したフランチャイズチェンパッケージの変更は、50年間のフランチャイズ運営のなかで初めての試みであり、当社のみならずFC加盟法人も含めたオートバックスグループ全体にとっても挑戦でありました。
私は、我々が事業環境の変化を上回るスピードで進化し続けるためには、店舗と本部が一体となることが必要不可欠であると判断し、これを進めました。具体的には2024年4月1日より、当社からの店舗への卸売価格を引き下げ、小売に付随するロイヤリティ料率を引き上げました。これにより、店舗での売上がFC本部の売上に直接結びつく仕組みへと変更し、店舗と本部が一体となり、お客様視点で商品やサービスの開発・提供を行っていけるものとしました。
この施策には一体感の醸成以外に、これまで十分ではなかったオートバックスというブランドの統一を進めるという目的もあります。フランチャイズの良さを最大限生かすためには、ブランドの訴求力の強化など、フランチャイズ全体で取り組むべきことは多くあります。しかし、これまでは一部の施策において、FC加盟法人ごとに実施有無を判断することがあり、足並みがなかなか揃わないことも多くありました。例えば、お客様の利便性を向上するためのDXソリューションもそのひとつですが、今後は、DX推進など中長期の成長投資は、ロイヤリティの一部を活用することで、早期に全店導入することが可能となることから、さらにオートバックスの進化を加速させることができます。
フランチャイズチェンパッケージ変更による成果はこれからですが、5ヵ年ローリングプランでは、これらを含め国内オートバックス事業で培った事業基盤を生かし、オートバックス事業以外で連結売上高を270億円増加することができました。
また、5ヵ年累計総還元性向を100%とする方針も掲げておりましたが、2023年9月にBMW/MINI正規ディーラー事業を売却した一時的な利益を除き5ヵ年累計の総還元性向は102.9%となりました。
新たな中期経営計画とその実現に向けて
2023年5月、私たちは2032年度の連結売上高5,000億円を掲げた長期経営計画を発表しました。既存事業の進化に加え、マイクロモビリティなど新たな事業の創造により2022年度の2倍の売上高となる成長です。これは、これまでの延長線上では成し得ない、つまり、これまでのようにやっていては達成できない目標であり、「願望実現」として挑戦をいかに具現化し、スピード感を持ち実践できるかが重要と考えております。
そして、5ヵ年ローリングプランの期間中は、コロナ禍など環境変化が激しいなかではありましたが、土台の構築を進めることができました。そこで、私たちは再成長に向けさらにアクセルを踏みこみ、利益水準をもう一段上げるべく、2024中期経営計画「Accelerating Towards Excellence」を策定し2024年5月にこれを発表しました。
2024中期経営計画において私たちは、最も得意とする小売と卸売の2軸に今後の方向性を集中し、グローバルにこれを展開することを主たる戦略としています。
そして、その戦略骨子は、「タッチポイントの創出」「商品・ソリューションの開発と供給」「新たな事業ドメインの設定」の3つとしております。
タッチポイントの創出では、今までの固定概念を覆し、居ぬき物件の活用や柔軟な店舗形態を模索することで、ローコストで採算性の高い店舗運営を目指します。また、商品・ソリューションの開発と供給では、サプライチェーンの見直し等により、魅力ある商品・サービスの開発を加速させ、これをデジタルの力も使いながらお客様に提供するなど、IT・DX化を進めてまいります。そして新たな事業ドメインの設定では、刻々と変化するモビリティの趨勢に合わせ、事業の方向性を柔軟に変更しながら、既存のアセットを活用した新たな事業と、EVやモビリティ周辺の新たな事業ドメインへ挑戦いたします。
2024中期経営計画をまとめるにあたっては、次の経営幹部として中期的な未来を担うであろう部長や課長を中心にメンバーを選出し、取締役会と共に議論を重ねてまいりました。これは、価値創造の源泉として掲げる人的資本経営において、多様性を生かして議論し計画を策定することが重要であると考えるからです。私は、計画の策定から実行までを彼らと共に進め、彼らの主体性と多様性を生かすことが、私の責務であり、私たちの次なる進化とイノベーションの創出につながると考えています。
「BEYOND AUTOBACS」をこの50年の節目に掲げ、社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現のために、私は、これからも「進化」と「成長」の両輪で事業構造の改革を推し進めてまいります。
最後に
これからも、モビリティを取り巻く環境は大きく、そして目まぐるしいスピードで変化し続けることでしょう。私は、モビリティを取り巻く環境がどのように変化しようとも、モビリティにかかわるお客様の煩わしさを軽減し、「出かける楽しさ」を提案し続けることに、国内外を問わず邁進してまいります。そして、より一層お客様に支持される企業グループへと進化させ、お客様にとって我々が生活の基盤になるような存在「モビリティライフのインフラ」を目指します。
オートバックスが誕生して50年。FC加盟法人をはじめ、オートバックスグループのスタッフの皆様、お客様、お取引先様、株主の皆様など、さまざまなステークホルダーの皆様に支えられ、この50年を迎えることができました。本書を通じ、改めて感謝の気持ちをお伝えするとともに厚く御礼申し上げます。
私は、今後も皆様との対話をこれまで以上に活発にし、経営に生かしていきたいと考えております。私たちは、非常に大きな挑戦に踏み出しています。しかし、私には迷いはありません。ステークホルダーの皆様と共に、次なる進化を遂げたいと考えております。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。