全国約600店舗のオートバックス店舗に商品を安定的に供給する――。それは一見、当たり前のように続いてきたオートバックスの物流の姿です。
しかし今、その当たり前を支えてきた物流の仕組みそのものが、大きな転換点を迎えています。
少子高齢化による労働人口の減少、物流業界全体の人手不足、そして事業領域の拡大。こうした環境変化に直面するなかで、従来の延長線上にある物流では、次の成長を支え切れない。
私たちは、こうした危機感を持ち、物流基盤の再構築に踏み出しました。
東日本と西日本の2つの巨大ロジスティクスセンターを中核とし、全国へと張り巡らされた物流ネットワーク。その舞台裏では、「効率化」「自動化」「持続可能性」という難題に真正面から向き合う、オートバックスセブングループの挑戦が続いています。
「小売」と「卸売」を事業の中核に据え、構造改革を進めるオートバックスセブングループ。長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」で掲げる連結売上高5,000億円の実現に向け、私たちはこれまでの枠にとらわれない事業展開に挑戦しています。
オートバックスブランドに限定しない小売店舗、ECの拡大、グループ外への卸売強化。販売チャネルの多様化は、同時に物流の在り方そのものを問い直すことでもあります。
モノが増え、行先が増え、スピードと正確性が一層求められる、その要求水準をクリアし続けるために、「物流はコストセンター」という従来の発想から脱却し、事業成長を加速させる戦略的基盤としての物流へ進化させることが、今私たちに求められています。
物流改革の背景
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- 物流管掌 物流戦略部長 直吉秀樹
直吉:これまでの約30年間、当社のロジスティクスセンターは、祖業であるオートバックス店舗へのカー用品供給に特化するかたちで構築され、長年の経験効果も相まって、高い効率性を実現してきました。しかし、その完成度の高さこそが、次の成長フェーズにおいては、「変革の壁」になる可能性がありました。
長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」で掲げる事業領域の拡大を成し遂げるなら、物流もまた改革する必要がある。私たちはそう判断し、物流基盤そのものを成長戦略の一部として、再定義しました。
特に重要だと考えているのが、「物流」と「IT」です。
物流機能を自社で持つからこそ、スピード・柔軟性・品質において、競争優位性を築くことができます。一方で、設備投資には常にリスクが伴います。だからこそ、事業成長のスピードや規模を見極めながら、段階的かつ戦略的に投資を進めています。
直近の改革で進化を図った要素としては、「自動化」です。
人手不足という社会課題に対し、「人を増やす」のではなく、「人がより価値の高い仕事に集中できる仕組みをつくる」。これが、私たちの挑戦です。
単なる省人化ではなく、精度・安全性・働きやすさを同時に高めることが大事であり、そのために最新のテクノロジーを駆使して、失敗や改善を繰り返しながら、現場に根づく物流の進化を進めています。
自律型協働ロボット ~人手不足という壁に、現場主導で挑んだ第一歩~

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- 自律型協働ロボット「PEER100」
ロジスティクスセンターの業務の中でも、特に多くの人手を要していたピッキング作業。「人を増やして対応する」ことが年々難しくなる中で、従来のやり方の限界を、現場は強く感じていました。
ロボットの導入は、決して単純な効率化施策ではありませんでした。「本当に現場で機能するのか」「既存のWMS※1やレイアウトと両立できるのか」「かえって負荷が増えないか」——現場には不安もあり、慎重な検討が必要でした。
※1: Warehouse Management Systemの略 物流センター内の入荷、検品、棚入れ、保管、ピッキング、出荷までの在庫情報や作業進捗をリアルタイムに一元管理するソフトウェア
そこで私たちは、いきなり本格導入するのではなく、PoC(概念実証)からスタートする道を選びました。2024年9月、東日本ロジスティクスセンター(以降、東ロジ)にGROUND社の自立型協働ロボット 「PEER100」を試験導入。実際の業務環境で、生産性・動線・作業負荷を一つひとつ検証していきました。

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- 自律型協働ロボット「PEER100」
試行錯誤の末に見えたのは、「ロボットが動き、人が考える」新しい作業のかたちでした。
ロボットはWMSの情報を基に棚前まで自律的に移動し、作業者はその場でピッキングに集中する「ゾーンピック方式」へ転換。最初は操作に戸惑う場面もありましたが、タブレット表示やエラー検知機能により、未経験者でも安定した作業が可能になっていきました。
結果として、生産性は約2倍に向上。歩行距離の削減による身体的負担の軽減と、人員配置の最適化も実現しました。この取り組みは、「人手不足だから仕方ない」という諦めを、「仕組みで乗り越える」という発想へ転換する第一歩となっています。
自動仕分けロボット「t-Sort」 ~固定観念を崩し、変化に耐える仕分けをつくる~

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- 自動仕分けロボット「t-Sort」
仕分け工程においても、従来の固定式ソーターでは、拡張性や柔軟性に課題を抱えていました。事業成長に合わせて物量が変化するなか、「最初に大きな設備を入れる」やり方は、将来の足かせになる可能性がありました。
そこで選択したのが、自律走行型の自動仕分けロボット「t‑Sort」です。ロボットが自ら移動して商品を目的の間口へ運ぶ仕組みは、初期段階では運用設計に苦労も伴いました。動線調整や人との協働ルールを現場で何度も見直し、少しずつ最適解を探っていきました。
その結果、レイアウト変更が容易で、事業規模に応じて段階的に拡張できる仕分け工程が完成。人手不足への対応に加え、歩行量の削減、仕分けミスの低減といった効果も着実に現れています。
「今の最適」ではなく、「これからの変化に耐えられる仕組み」として、t‑Sortは、そんな意思決定の象徴とも言える取り組みです。
デバンニングロボット ~失敗を重ねながら、“重労働”をなくす挑戦~
コンテナからの荷下ろし作業は、長年にわたり人手に頼ってきた工程でした。
特に夏冬の厳しい環境下での作業は身体的負担が大きく、改善の必要性は以前から認識されていました。
2025年11月、西日本ロジスティクスセンター(以降、西ロジ)にXYZ Robotics社のデバンニングロボット「Rocky One」を導入。しかし、導入は決して順風満帆ではなく、荷姿の事前登録ミスによる誤作動や想定外のトラブルが発生し、現場には混乱も生じました。
それでも、「やめる」という選択肢は取りませんでした。現場とメーカーが一体となって原因を洗い出し、設定や運用を改善。試行錯誤を重ねた結果、現在は安定稼働を実現しています。
人が担ってきた過酷な作業を、機械に任せる。これは単なる省人化ではなく、「安全で持続可能な現場」をつくるための挑戦です。今後は東ロジへの展開も視野に入れ、物流全体での標準化を目指しています。
Before
After

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- デバンニングロボット 「Rocky One」
西ロジ新倉庫 ~タイヤ物流を、“人に依存しないモデル”へ進化させる挑戦~

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- 「FRENDIX」社製タイヤマネジメントシステム
タイヤは、オートバックスの事業を支える基幹商材です。一方で、その重量や荷姿の特性から、保管・搬送・積み込みのすべてにおいて人手に頼らざるを得ない場面が多く、物流現場にとっては最も負荷の大きい商材でもありました。
今後、タイヤ販売の競争力をさらに高め、タイヤ預かりサービスを拡大していくためには、従来のオペレーションの延長では限界がある。そうした課題意識から誕生したのが、2025年10月に稼働を開始した西ロジ新倉庫です。延床970坪の鉄骨平屋建てというハード面の拡張だけでなく、この新倉庫の最大の挑戦は、「人がタイヤに触れない物流」を目指した点にあります。
その中核を担うのが、フィンランドのFRENDIX社製タイヤマネジメントシステムです。4本1セットのタイヤをスタッカーリフトで搬送・保管し、入庫から出庫、トラックへの積み替え、店舗での荷下ろしに至るまで、一気通貫の作業を可能にしました。手下ろし・手積みが中心だった従来の運用と比べ、重労働からの解放と大幅な省力化を実現しています。
もちろん、新しい仕組みの導入には不安もありました。設備トラブルへの備え、現場オペレーションの再設計、既存業務との切り替え。一つひとつ課題を洗い出し、現場とともに運用を磨き込んできました。その結果、作業人員1名分、フォークリフト運転作業員1名分を代替できる見込みが立ち、人材不足リスクの低減にもつながっています。
西ロジ新倉庫は、タイヤ物流における「これからの標準モデル」として、今後の展開を見据えた重要な一歩となっています。
食堂リニューアル ~設備だけでなく、「人」に投資するという決断~
物流改革というと、どうしても設備やシステムに目が向きがちです。しかし私たちは、「どれだけ自動化を進めても、最後に現場を支えるのは人である」と考えています。
これまで東西ロジスティクスセンターの食堂は、テーブルとイスだけが並ぶ空間となっていました。近隣に飲食店も少なく、従業員は各自で食事を持ち込まざるを得ない状況です。
人手不足が深刻化するなかで、「働き続けたいと思える職場であるか」は、これまで以上に重要なテーマとなっています。
そこで食堂を「BACS Café」として全面リニューアルし、2026年2月から食事提供を再開しました。
リニューアルでは、単なる食事スペースではなく、「気持ちを切り替え、自然と人が集まる場」を目指しました。入口正面には大型デジタルサイネージを設置し、季節やテーマに応じた映像を投影。ラウンジ席、ソファ席、憩いエリアなど、利用シーンに合わせて選べる空間設計としています。
Before
After
厨房で作られる温かい食事の提供再開もあり、オープン初日から長い列ができるほどの賑わいを見せました。食事をきっかけに会話が生まれ、部門や立場を越えたコミュニケーションが自然と広がっています。
人に投資することは、すぐに数字で測れる成果ばかりではありません。それでも、こうした積み重ねこそが、挑戦を支える基盤になると、私たちは考えています。
今後について
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- 物流管掌 物流戦略部長 直吉秀樹
直吉:ロボットや自動化設備は、目的ではなく手段です。もちろんロジスティクスセンター設備への投資だけでなく、店舗の負担を減らす工夫も随時行っています。最適な出荷箱の編成や緊急出荷対応など、常に現場の声に耳を傾け、改善を重ね、次の一手を考えます。
今後も常に効率改善とコスト削減を模索し、最善の方法をとれるようアンテナを張り、経営と一体となって事業成長に資する物流基盤を構築していきます。これからのオートバックスセブングループの成長にご期待ください。
物流は、決して目立つ存在ではありません。しかし、当たり前に商品が届くその裏側には、数えきれない工夫と挑戦があります。
